相続は何から始める?期限・預貯金・株式・実家の不動産を、順番に確認する

正直に言うと、私自身、相続について考えたことはあります。ただ、家族と具体的に話し合ったり、何か行動に移したりは、まだ一切できていません。「そのうち考えないと」と思ったまま、時間だけが過ぎている状態です。
同じような人は多いのではないでしょうか。相続は、手続きの期限がいくつも重なるところが厄介です。何から手をつければいいか分からないまま、気づくと期限が近づいている、ということが起こります。
この記事は、専門家の解説ではなく、私と同じように「考えたことはあるが動けていない」人が、まず何を確認すればいいのかを、国税庁・法務省・裁判所などの公式情報で整理したものです。
この記事でわかること
①相続の期限の一覧(3か月・4か月・10か月・3年)
②相続税がかかるかの目安(基礎控除)
③亡くなった人の預貯金・株式・不動産の調べ方と、お金の引き出し方
④実家の空き家を売るときの特例
⑤生前贈与のルールの見直し
筆者(KENTA)は、相続について考えたことはありますが、家族と話し合ったり、手続きをしたりといった具体的な行動には、まだ移せていません。特定の個人の相続税額や、手続きの要否の判断はしません。実際の相続は、税理士・司法書士・弁護士、税務署・法務局・家庭裁判所に確認してください。
結論:先に3つのことを押さえる
- 期限は、起点がそれぞれ違う。 相続放棄は3か月、準確定申告は4か月、相続税の申告は10か月、相続登記は3年。まず、一覧で全体を見る
- 「何を持っていたか」の把握が最初の作業。 預貯金、株式、不動産、借金。分からないときの調べ方が、制度として用意されている
- 相続税は、遺産が基礎控除を超えたときだけ。 ただし、申告が不要でも、他の手続き(相続登記など)は必要になる
相続の期限の一覧
| 期限 | 何の期限か | 起点 |
|---|---|---|
| 3か月以内 | 相続放棄・限定承認の申述(家庭裁判所) | 自己のために相続の開始があったことを知ったとき |
| 4か月以内 | 準確定申告(亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得税) | 相続の開始があったことを知った日の翌日 |
| 10か月以内 | 相続税の申告と納税 | 死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日 |
| 3年以内 | 相続登記の申請(義務) | 相続の開始と、その不動産を取得したことを知った日 |
| 3年以内 | 遺産分割が成立したときの登記(義務) | 遺産分割が成立した日 |
| 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで | 空き家(被相続人の居住用財産)を売るときの3,000万円の特別控除を使う場合の売却期限 | 相続の開始があった日 |
(出典:裁判所、国税庁、法務省。詳細は以下の各項目)
全部を一人で把握する必要はありません。 筆者の整理では、「3か月」「4か月」「10か月」の3つは、早めに税理士・司法書士などの専門家に相談するか、税務署・家庭裁判所の窓口で確認する、と考えておくと、取りこぼしが減ると思います。
3か月:相続放棄と、判断する時間が足りないとき
裁判所によると、相続人は、相続について、次の3つのうちのいずれかを選べます。
- 単純承認(そのまま相続する)
- 相続放棄(プラスの財産も、借金も、受け継がない)
- 限定承認(相続で得た財産の範囲で、借金を受け継ぐ)
このうち、相続放棄と限定承認は、家庭裁判所に申述する必要があり、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければなりません。
借金が多いか分からないなどで、3か月以内に、承認か放棄かを判断する材料が集まらない場合は、家庭裁判所に、期間の伸長(延ばす手続き)を申し立てる方法があります(裁判所)。放棄・伸長の具体的な可否や、起算点の判断は個別の事情による(家庭裁判所・弁護士・司法書士に確認)。
4か月:準確定申告
国税庁によると、亡くなった人が、年の途中で死亡した場合は、相続人が、1月1日から死亡日までの所得について、確定申告をする必要があります(準確定申告)。期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。
相続人が2人以上いる場合は、各相続人が連署して提出するのが原則です(各人が別々に提出することもできる)。亡くなった人に申告が必要だったかどうかは、収入の内容によって変わるので、税務署に確認してください。
10か月:相続税がかかるかの目安
基礎控除
相続税は、遺産の総額が基礎控除を超えたときにだけかかります。国税庁による計算式は、次のとおりです。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、法定相続人が配偶者と子2人の合計3人なら、3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。遺産の総額が基礎控除の範囲内なら、申告も納税も必要ありません(国税庁)。
死亡保険金の非課税枠
生命保険の死亡保険金は、遺産とは別に、非課税枠があります。受取人が相続人の場合、すべての相続人が受け取った保険金の合計額のうち、次の額までは非課税です(国税庁)。
500万円 × 法定相続人の数
法定相続人が3人なら、1,500万円です。相続人以外の人が受け取った死亡保険金には、非課税の適用はありません。 保険の契約内容(契約者・被保険者・受取人)を家族が把握しているかも、確認しておきたい点です。
申告期限
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です。たとえば、1月6日に死亡した場合は、その年の11月6日が期限です。期限が土日祝日にあたるときは、その翌日が期限とみなされます。
基礎控除を超えるかどうかは、不動産の評価額の算定方法など専門的な判断が必要な場合があります。この記事は制度の大枠を知るための整理で、実際に自分の家がかかるかどうかの判断は、税理士や税務署に確認してください。国税庁には、おおよその要否を判定できるコーナーもあります。
まず何を持っていたか調べる
戸籍を集める前に:「法定相続情報一覧図」
預貯金の解約、不動産の登記、株式の手続きなどで、金融機関ごとに戸籍の束を出すのは大変です。法務省によると、法定相続情報証明制度を使うと、法務局が、法定相続人が誰かを一覧にした「法定相続情報一覧図」の写しを、無料で、必要な通数だけ交付します。
- 手数料は無料。ただし、戸籍の取得には手数料がかかり、郵送では郵送料もかかる
- 一覧図は法務局で5年間保管され、その間は再交付できる
- 令和6年4月1日から、不動産登記の申請書に法定相続情報番号を記載すれば、写しの添付を省略できる
預貯金:遺産分割の前でも、一部は引き出せる
亡くなった人の預貯金は、遺産分割の前は、相続人が単独では原則として引き出せません。ただし、法務省によると、遺産分割の前でも、預貯金の一部を払い戻せる制度があります。
単独で払い戻せる額 = 相続開始時の預貯金の額 × 3分の1 × 払戻しを求める相続人の法定相続分
※ ただし、1つの金融機関から払戻しを受けられるのは、150万円まで
筆者の計算例:預金が600万円で、法定相続分が2分の1の人が払戻しを求める場合は、600万円×1/3×1/2=100万円です(法務省の資料にも同じ設定の例がある)。葬儀費用や当面の生活費、借金の返済など、急ぎのお金に使える制度です。
払戻しの手続きは、金融機関ごとに異なります。必要な書類は、窓口で確認してください。
株式・投資信託:どこの証券会社に口座があるか分からないとき
親が株式を持っていたかもしれないが、どの証券会社か分からない、という場合に、証券保管振替機構(ほふり)の「登録済加入者情報の開示請求」を使えます。
| 項目 | 内容(ほふりの案内による) |
|---|---|
| 分かること | 振替株式等の口座が、開示時点で開設されている証券会社・信託銀行等の一覧 |
| 分からないこと | 銘柄名、取引履歴、保有残高 |
| 残高の調べ方 | 開示結果をもとに、各証券会社・信託銀行等に直接問い合わせる |
| 費用 | 1件 7,700円(税込)。法務局の法定相続情報一覧図を提出すると、6,050円(税込) |
| 期間 | 書類に不備がなければ、受付から結果の送付まで、2か月ほど |
| 主な書類 | 開示請求書、請求者の本人確認書類、法定相続情報一覧図または戸籍等の相続関係を示す書類(コピー) |
(2026年10月版の案内にもとづく。費用・期間・書類は変わることがあるので、申請前に最新版を確認する)
法定相続情報一覧図を先に取っておくと、手数料が安くなるので、順番は、一覧図 → 開示請求です。ほふりで分かるのは、国内の上場株式・ETFなどの口座のある会社です。外国株式、国債、社債などは対象外で、別に確認が必要です(ほふり)。
不動産:何を持っていたか分からないとき
法務省によると、所有不動産記録証明制度(令和8年2月2日施行)があります。特定の被相続人が、登記簿上の所有者として記録されている不動産を、一覧にして証明する制度です。相続登記が必要な不動産を、もれなく把握するために使えます。
3年:相続登記の義務化
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記が義務化されました(法務省)。
- 相続(遺言を含む)で不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する義務がある
- 正当な理由がないのに怠ると、10万円以下の過料の対象になる
- 施行日(令和6年4月1日)より前に開始した相続でも、まだ登記していない場合は、義務化の対象になる。期限は令和9年(2027年)3月31日まで
- 遺産分割が成立した場合は、成立した日から3年以内に、その内容にそった登記を申請する義務が別にある
3年以内の登記が難しいときは、簡易な「相続人申告登記」(相続人であることを法務局に申し出る)で、基本の義務を果たせます。ただし、遺産分割が成立した場合の追加の義務は、相続人申告登記では果たせません(法務省)。
また、法務省によると、登録免許税の免税措置(令和9年3月31日まで)があります。対象は、相続により土地を取得した人が登記をしないまま亡くなった場合の相続登記と、不動産の価額が100万円以下の土地の相続登記です。
実家の空き家を売るとき:3,000万円の特別控除
実家が空き家になり、売却を考える場合の特例があります。国税庁によると、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの譲渡所得の特別控除の特例(3,000万円)です。
主な要件は、次のとおりです(国税庁。「被相続人居住用家屋」の要件ほか、細かな条件が多い)。
- 相続または遺贈で取得した、被相続人が住んでいた家屋(昭和56年5月31日以前の建築、区分所有建物でない、相続開始の直前に被相続人以外に居住していた人がいない)や、その敷地を売ること
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却代金が1億円以下であること
- 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの売却が対象
- 令和6年1月1日以後の売却で、家屋と敷地を相続した相続人が3人以上の場合は、2,000万円が上限
- 売却の際に、一定の耐震基準を満たすか、家屋を取り壊して売る、などの条件がある(令和6年以後は、売却後の翌年2月15日までに耐震改修か取り壊しを行う場合も対象)
この特例は、要件が細かく、期限も短いため、売却を決める前に、税務署または税理士に確認してください。
売却を考える場合は、複数の不動産会社に査定を依頼して、金額や条件を比べることが、一般的に勧められています(筆者の整理。国の資料では、今回この点を直接確認できていません)。査定額は会社によって差が出ることがあります。国土交通省は、空き家を売るときの選択肢として、空き家バンクや、事前の建物調査(インスペクション)も紹介しています。
生前にできる準備
相続が発生してから慌てないために、生前からできることもあります。
- 家族で、「誰にどんな財産があるか」を、大まかにでも話し合っておく
- 通帳・保険証券・不動産の権利書、証券会社の取引報告書や、ネット証券のログイン方法などの保管場所を共有する(暗証番号や、パスワードそのものを、メモにして共有するかどうかは、慎重に)
- 遺言を残したい場合は、法務局の自筆証書遺言書保管制度があることを知っておく(この制度で保管された遺言書は、家庭裁判所の検認が不要。法務省)
生前贈与の持ち戻し期間の見直し
生前に贈与をした場合、相続税の計算で、相続開始前の一定期間の贈与が、相続財産に加算されます。国税庁によると、令和6年1月1日以後の贈与について、加算される期間が、これまでの3年から7年へ、段階的に延びます。
| 相続開始日 | 加算対象期間(暦年課税の贈与) |
|---|---|
| 令和8年12月31日まで | 相続開始前3年以内 |
| 令和9年1月1日〜令和12年12月31日 | 令和6年1月1日から死亡日まで |
| 令和13年1月1日以降 | 相続開始前7年以内 |
基礎控除額110万円以下の贈与でも、加算対象期間内であれば加算されます(国税庁)。「毎年110万円以内ならば、相続税に関係ない」とは限らない点に注意してください。
死亡保険金の契約内容と公的保障を整理するときは、生命保険を整理した体験|公的保障と必要保障額の確認手順もあわせて確認してください。
実行用チェックリスト
- [ ] 法定相続人が誰になるか(配偶者・子・親・兄弟姉妹の順)を、大まかに把握する
- [ ] 財産(不動産・預貯金・株式・保険・借金)のおおまかな種類と、保管場所を確認する
- [ ] 基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えそうか、大まかな目安を持つ
- [ ] すでに相続していて、登記していない不動産がないか確認する(令和9年3月31日まで)
- [ ] 死亡保険金の契約内容(契約者・被保険者・受取人)を、家族で把握しておく
- [ ] 親が株式を持っていそうなら、ほふりの開示請求の流れを知っておく
- [ ] 実家が空き家になりそうなら、空き家の特例の期限(相続開始から3年後の12月31日)を頭に入れておく
- [ ] 期限(3か月・4か月・10か月・3年)を、カレンダーに書き出す
よくある質問
Q. 相続税は誰でもかかりますか?
A. かかりません。遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合にのみ、課税対象になります。
Q. 相続登記の義務化は、これから発生する相続だけが対象ですか?
A. いいえ。2024年4月1日より前に開始した相続でも、まだ登記していない場合は対象で、期限は令和9年(2027年)3月31日までです。
Q. 相続登記をしないとどうなりますか?
A. 正当な理由がないのに申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります。期限内の登記が難しい場合は、「相続人申告登記」で、基本の義務を果たせます。
Q. 借金があるか分からないときは?
A. 相続放棄などの期限は3か月で、判断する材料が集まらない場合は、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てる方法があります。早めに、家庭裁判所・弁護士・司法書士に相談してください。
Q. 親の預貯金を、遺産分割の前に引き出せますか?
A. 一定額までは、単独で払い戻せる制度があります(相続開始時の預貯金×1/3×法定相続分。1つの金融機関から150万円まで)。手続きは、金融機関に確認してください。
まとめ
- 相続の期限は、3か月(放棄)、4か月(準確定申告)、10か月(相続税)、3年(相続登記)。起点がそれぞれ違うので、一覧で把握する
- 相続税は、遺産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えたときだけ。死亡保険金には、別枠で非課税枠がある
- 預貯金は、遺産分割の前でも、一部を引き出せる制度がある。株式は、ほふりの開示請求で、口座のある証券会社を調べられる
- 実家の空き家を売るときの3,000万円の特別控除は、期限と要件が細かいので、売却の前に確認する
- 生前贈与は、相続開始前の一定期間の分が加算される。期間が3年から7年へ延びる
「考えたことはあるが、まだ動けていない」という人は、私も含めて多いはずです。まずは、家族が持っていそうな財産の種類と、期限の一覧を知るところから始めてみようと思います。
確認した一次情報と確認日(2026年10月22日)
- 国税庁「No.4152 相続税の計算」「No.4205 相続税の申告と納税」「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」(いずれも令和8年4月1日現在法令等)
- 法務省「相続登記の申請義務化について」「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」「自筆証書遺言書保管制度」「法定相続情報証明制度」
- 裁判所「相続の放棄の申述」
- 証券保管振替機構「登録済加入者情報の開示請求」(相続人用の案内、2026年10月版)
詳細は sources.md に記載しています(草案段階。公開時は本文末尾に出典を残す)。
免責
本記事は2026年10月22日時点で確認できた公式情報にもとづく一般的な解説であり、特定の個人の相続税額・相続手続きの要否を保証するものではありません。実際の相続税の計算(不動産の評価額を含む)、相続放棄、相続登記、空き家の特例の適用の可否などは、税理士・司法書士・弁護士、または税務署・法務局・家庭裁判所に個別に確認してください。筆者自身は、相続について具体的な行動には移せていない立場から、制度の基本を整理しています。